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2012年4月23日 (月)

Karen Hesse: Out of the Dust

日々の忙しさの中で、なかなか英語の本を読めません。時間もないのですが、それ以上に気力が出てきません。それでも、なんとか最近ふと手に取った本がこれです。大変重くて、深遠なテーマを持っています。そして、今日(こんにち)の私達にとっても、示唆に富む作品に思われます。皆さん、ぜひ読んでみませんか?

Karen Hesse: Out of the Dust 

ニューベリー賞をはじめ、幾つもの賞を受賞した問題作であり、アメリカ史を深く掘り下げながら今日にも通じる問題を扱った意欲作です。作者の力を感じます。物語は1934年から1935年、オクラホマのある家族と一人の少女の日常を描きます。大不況のさなか、ビリー・ジョーの住むオクラホマを恐ろしい砂嵐が襲います。たび重なる自然の脅威、水は枯れ、畑の作物はみんなダメになる・・・・そして身重の母を襲う悲劇。ビリー・ジョーもまた、大やけどを負い大好きなピアノすらも弾けなくなるのでした。父と二人になってからも、やまない砂嵐。希望はどこにあるでしょう。多くの家族が土地を捨て、カリフォルニアへと去る中でも、ビリー・ジョーは耐えて生きるのです。

この作品をもっとも有名にしたのは、たぶん、詩の形式で書かれていて、文章が大変透明感に満ちているからではないでしょうか。恐ろしいエピソードに溢れていながら、緊張感とともに美しく響く韻律のような、ピアノの調べのような文が続いています。(ちょっとE.E.Cummingsみたいかな、私は米文学に詳しいわけではないのですが・・・・)その文の美しさと、ある意味ぱらぱら度の高いおかげで、すらすらと読み終えることができました。

オクラホマやその周辺の州を襲った当時の砂嵐はDust bowlとも呼ばれていて、大変有名なものらしいです。急に増えた人口や、農業の方法の変化に自然が壊されていって起こったことのようです。現代にも通じるような、自然破壊と人口のバランス、そして一度壊れるとなかなか戻らないという大問題ですね。アメリカ史に大変興味があるので、その意味でもこの作品を読んでよかったです。

表紙の少女は、実在の人物で、作者がこの写真に大変感銘を受けてモチーフとしたのだそうです。本の最後には作者の言葉や、作品の背景なども解説されていて、読み応えがありました。それから、苦境のさなかでも、人々が音楽などに喜びを見出して、ビリー・ジョーが音楽をいつも支えにしているなど、現代に通じるような示唆に満ちてもいました。苦しくても美しいもの楽しいものを人は求めるものですね。

今は何かと苦しいことも多くなってはいますが、私達はパンのみにて生きるわけではないと思いださせてもらいました。この作品は「ビリー・ジョーの大地」というタイトルで日本語訳も出ていますよ。

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